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 「ピレネー」で小6男児右眼窩底骨折事件についての考察(その1)

平成22年5月25日。
志摩スペイン村へ修学旅行にて来園していた小学6年生の男児が、インバーテッドコースター「ピレネー」乗車した際。
運転中、ショルダーハーネスに頭部を強打し、右眼窩底骨折をしてしまった。と言う事件が起こりました。

コースター自体はいたって普通の運行を行っていた上で発生した事なので、事故とは言わないことにします。

通常、このような事件はパーク側が責められがちですが、今回に関しては何かがおかしいようです。
マスコミは湾曲した情報ばかりを流すので、マニアとしての目線から、真意を検証してみたいと思います。

 現在の報道状況

まず、数々のネットのニュースから引用をしていきます。

 毎日新聞

三重県志摩市のテーマパーク「志摩スペイン村」で25日、ジェットコースター「ピレネー」に乗っていた神戸市立東灘小6年男児(11)が座席の安全バーに顔を強打し、右眼窩(がんか)底骨折の重傷を負った事故で、スペイン村が県警鳥羽署に通報したのは事故から約3時間後だったことが26日、分かった。スペイン村は引率教師から救急車の要請を受け、初めて通報していた。
男児は同署に「最初に1回転する際、上昇中に安全バーに顔をぶつけた」と話しているという。
同署は26日午前、業務上過失傷害容疑で実況見分を行い、従業員から作業手順などを聞き取り、県も調査に入った。ピレネーの運転は見合わせている。
スペイン村の説明では、午後2時10分ごろ、コースターから降りた男児が鼻血を出し「右目が痛い」と訴えたため、救護室で応急処置をした。顔にはれなどはなく、救護室で様子を見たという。
引率教師は救急車を呼ぶよう要請し、スペイン村は午後3時半になって119番通報した。県立志摩病院(志摩市)へ救急搬送中に嘔吐(おうと)したとの情報が入り、午後3時55分に社長に事故を報告。診断結果が出た後の午後5時ごろ、同署に通報]した。
スペイン村は「男児に目立った外傷はなかった。原因が分からない段階で通常、警察に通報はしない」と説明している。
矢尾弘・営業企画部長は26日、「男児が一生に1回の修学旅行で不快な思いをしたことを謝りたい」と謝罪した。
(毎日.jpより引用 5月26日16時27分)

 朝日新聞

三重県志摩市のテーマパーク「志摩スペイン村」で25日午後にジェットコースター「ピレネー」に乗っていた神戸市の小学6年の男子児童(11)が顔の骨を折る重傷を負った事故で、鳥羽署は26日、午前10時すぎから現場で実況見分をした。また、県も立ち入り調査を行った。
男児は時速100キロが出る付近で上半身を固定する安全バーに顔をぶつけたとみられており、同署は車体の構造などを調べている。
県は、運行管理者らから事故当日の利用人数や不具合の有無などを聞き取っている。今年2月18日に行った法定点検では、異常は見つからなかったという。
(asahi.comより引用 2010年5月26日12時17分)

 伊勢新聞

調べによると、男児が乗っていたのは車両最前列の四座席の右から二番目。肩から降ろすU字形安全バーの中央部にベルトと接続するバックルがあり、その周辺から血液らしきものを採取したという。
児童は二十五日の降車時に鼻血を出していて、乗車中に安全バーで顔を打ったと話していた。
県警と鳥羽署は安全管理に問題がなかったかを含め、調査を続ける方針。
施設を運営する株式会社志摩スペイン村によると、同コースターはつり下げ式で、出発してすぐに高さ四十五メートル地点まで上昇し、ひねりながら急降下する。コースの全長は千二百三十四メートルで最高時速百キロ。
事故当時は二人のスタッフで運行し、運行前の点検や客の案内に問題はなかったとしている。
利用条件は身長一三〇センチ以上、十歳以上で、男児の身長は一三三センチ。
(伊勢新聞Web Newsより引用 2010/5/27(木))

 中日新聞

鳥羽署などによると、児童は最前列に乗り、最高地点の45メートルから降下する際、顔を打ったらしい。安全バーはウレタン製のクッションで、U字形。
(CHUNICHI Webより引用 2010年5月26日 09時09分)

 時事通信

県警鳥羽署によると、男児は関係者に「最初の下り坂で、安全バーの右側に顔をぶつけた」と話したといい、同署が原因を調べている。
(時事ドットコムより引用 2010/05/26-00:36)

 報道状況からの事実

上の記事から、事実をまとめると、以下のようになります。

(1)運行基準はすべて満たしていた

(根拠)
・今年2月18日に行った法定点検では、異常は見つからなかった
・利用条件は身長一三〇センチ以上、十歳以上で、男児の身長は一三三センチ。

(2)顔を打った場所が矛盾している

(根拠)
・最初に1回転する際、上昇中に安全バーに顔をぶつけた→第一垂直ループ
・最高地点の45メートルから降下する際、顔を打った→ファーストドロップ

(3)事件発生後の対応が遅い

(根拠)
・通報したのは事故から約3時間後
・診断結果が出た後の午後5時ごろ、同署に通報
・男児に目立った外傷はなかった。原因が分からない段階で通常、
 警察に通報はしない(スペイン村対応)

(4)鼻血を出していることから、鼻もぶつけている

(根拠)
・降車時に鼻血を出していて、乗車中に安全バーで顔を打った
・肩から降ろすU字形安全バーの中央部にベルトと接続するバックルがあり、
 その周辺から血液らしきものを採取

⇒打った場所は鼻+右目周辺

(5)顔を打ったのは安全バー右側

(根拠)
・安全バーの右側に顔をぶつけた

 現場状況

管理人の撮り貯めてた写真から現場状況を。

 座席

ピレネーの車両は他にも1編成(2編成??)あり、骨折をしたのがこの編成かどうかは定かではありませんが、構造は同じなので参考程度に。

最前列が写ってないのが痛いなぁ.....

骨折をした男児は、最前列右から二番目に乗っていたと言うこと。
B&M特有の4列シートでもあり、体をすっぽりと覆うフルバケットタイプの座席。座れば結構深くまでお尻が入ります。これだけでもかなりの安定性な上に、上からのU字バーとそれを繋ぐベルト。安全面ではあまり問題ないはずなのですが....

で、写真から状況を整理すると...

上の画像のようになります。

この画像では3列目右端になってますが、実際は最前列右から2番目の座席です。

写真を見てもらっても分かるはずですが、U字バーには、持ち手(金具)が付いており、この部分はどう考えても固いですよね。

 ファーストドロップと第1垂直ループ

諸説ある顔を打った「場所」

ニュースに書いてある中で、可能性のある場所の全体像を。

ファーストドロップと垂直ループを正面から。ループ突入時のG変化はそれなりに強い。

ファーストドロップと垂直ループを横から。ファースト序盤、横方向の角度変化が意外に多いのが分かる。

ファーストドロップと垂直ループを地上から。

 ファーストドロップ詳細

ファーストドロップでライドがどの様な動きをするのか??解説します。

まずファーストドロップ全体。180度半周しながら落下します。

写真の部分はそれなりに確度も急な部分ですが、横方向のGはあまりありません。

ファースト序盤。ライドが大きくひねられているのが分かります。

ファースト序盤を分かりやすい方向から。ファーストが始まった場所で、かなり傾いてるのが分かります。

ファースト序盤をさらに拡大して解説付きで。
見てもらっても分かるように、最前列のファースト序盤と言うのは、速度の割に傾きが強いので、力を入れていないと首が傾くことがあります。しかし、ぶつける程ではありません。

 第1垂直ループ詳細

次は第1垂直ループでライドがどんな動きをするのか??解説します。

まず垂直ループ全景。綺麗なクロソイド曲線をしてます。

ループ上昇中...
上昇中はそれなりのプラスGが発生します。俯きながら乗っていたとすれば....

ループ頂上。ここでは、速度もある程度落ちているので、顔を打つ要素はあまりないでしょう。

ループ後半。ここも顔を打つ要素はあまりないです。

 次回予告

まだまだ長くなりそうなので、今回はこれぐらいでキリをつけます。

今回は、報道されている事実の整理。それから現場の現状のようなものをお伝えしました。

次回は、原因と対策。そして管理人なりの考察をまとめていきたいと思います。
今度こそは早めに更新しますので。

でも今月中(2010/06)にどこかインパしたいんだよね....


最終更新日:10/06/06

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